2015年9月24日木曜日

計数の原理 その②

計数は同じ属性をもった集合同士のみで成立します。
※鉛筆が2本とテレビが1台、全部で3つでは困ります(・_・;)チョット‥
そのため算数教科書では計数される対象はあらかじめ分類された集合となっています。
例・イヌ・ネコ・花等
 しかし、日常生活で計数をする場合はどうでしょうか?
日常では様々なものが混在しており、算数教科書のように理路整然と同じものが集合をつくっている場面ばかりではありません。
ものを数えるには確かにゲルマンの原理が必要なのですが、計数ではまず同じ性質・属性を持ったもの同士に分類する力が必要なのです。
実際、小学一年生・算数の最初の学習は「なかまづくり」=「分類」となっています。
 
そしてあらゆるものが混在するなかで、同じ属性をもったもの同士に分類しながら計数をする作業は、大人が考える以上に難しい作業なのです。
具体例を示しますと、下の画像は教室のテキスト「ABACUSレッスン1B」p18です。
さかな・いぬ・とり・むし・木が混在するイラストの中から、それぞれを仲間分けしながら計数をする単純な問題ですが、小学一年生で全問正解できる生徒は5、6人に1人しかいません。
しかしながら、発達心理学の大家・ピアジェの「思考の発達段階」によると「大きなシェパードも小さなチワワも同じ犬」と分類(クラス化)できるのは7、8歳からなので、この正答率の低さも小学一年生ならば無理からぬことと言えます。
 つまり「算数における計数」と「日常における計数」は明確に区別する必要があるのです。

 

「なぜこんな問題を間違えるのだろう?」と思える場合にも、しかるべき理由が存在しています。

最近、生徒の内面や発達を考慮した指導の重要性をますます痛感しております。
 

2015年9月15日火曜日

計数の原理 その①

 
 
 
 
 

 

SSKCLUBの会報第42号が出来上がりました。
レポートの作成は本当に大変なのですが、こうして自分の名前が出ているのを見るとやはり嬉しいですね!
今回のレポートではものを数える技能である「計数」を取り上げました。
大人からすると数えるという行為は極めて簡単なことです。
しかし、その計数力を身に付けるまでにはいくつかの発達過程を経る必要があります。
アメリカの心理学者ゲルマンは計数には5つの原理が必要であることを指摘しました。これは「計数の5つの原理」として発達心理学や教育心理学の世界では広く知られています。

【計数の5つの原理】

     一対一の原理

必ず1つのモノに1つの数詞を割り当てて数える。

正)○←1 ○←2 ○←3 ○←4 

誤)○←1 ○←2 ○←スキップ ○←3

     安定した順序の原理

計数する際に用いる数詞は常に「いち」「に」「さん」「し」・・と同じ順序で唱える。

正)いち に さん し ご ・・・

誤)いち に さん ご ろく ・・・

      基数の原理

モノ(集合)を数えたときに、最後の数詞がそのモノ(集合)の大きさの全体を表す。

正)○←1 ○←2 ○←3 ○←4 ○←5  ○は全部で5個ある

誤)○←1 ○←2 ○←3 ○←4 ○←5  ○は全部で4個ある

      抽象性の原理

計数するモノの色や形・大きさに関係なく、数として正しく数えられる

) 大人も子ども1人として数える

) 大人は1人だけど、子どもは小さいから1人ではない

 ⑤順序無関係の原理

正しく数えれば、モノ(集合)をどのような順番で数えてもよい。

) ○←3 ○←2 ○←1 ○←4 ○←5

ゲルマンの原理には批判もあるようですが学術的なことはともかく、上記の原理が一つでも欠けると「計数」ができないことは確かです。
今回のレポートではゲルマンの原理をふまえたうえでの「日常における計数」を考察しました。

―計数の原理 その②へ続く―